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2014年12月28日日曜日

『ジャスミンの残り香』   田原 牧著  集英社刊

本の紹介を致します。シリアやレバノンで世話になった日本人の友人が10日程前に店に寄ってくれた際、彼のことも書かれた書籍が最近出たので、是非読んで欲しいと勧められ、早速購入しました。著者は東京新聞の記者である田原牧氏で、上記タイトルの本は今年の開高健ノンフィクション賞を獲得しています。田原氏はこれまで30年以上に渡りアラブ社会をグローバルな視点から見つめてきた方なので、日本国内でも稀に見るアラブ通、気鋭のジャーナリストです。
『アラブの春』とか『ジャスミン革命』とよばれたアラブの民主化運動がチュニジアから始まり、もう4年が経過しました。この本では、エジプトやシリアでの紛争を中心に、現在日本で起こっている問題を絡めて書かれていますので、我々日本人も考えなければならない事項が含まれています。みなさまにも購読をお勧めします。

Arab as it is (素顔のアラブ) 12

前回に引き続き、2005年に訪れたシリアです。


                             Maalula, SYRIA
ダマスカスから北東に車で1時間程の位置に、住民の大半がキリスト教徒の町、マアルーラがある。この写真には町の一部分しか写っていないが、その小さな範囲内にも、岩の上の聖者像や、いくつものキリスト教会を見ることができる。以前にも述べたが、二世代に渡って国を統治しているアラウィ派のアサド大統領は世俗主義なので、キリスト教をはじめ様々な宗教の存在を認めてきた。ただ、世俗主義であるが故、宗教上の原理主義は認めなかった。現在起こっているシリアの内戦では、イスラム教スンニ派の過激な原理主義者がスンニ派に忠実な教徒以外を弾圧し、多くのキリスト教徒が殺害されたり、施設が破壊されたようだ。この町でもかなりの被害があったと想像でき、そんな過激派には怒りを覚える。


                      Quneitra, SYRIA
これはゴラン高原入口の町、クネイトラにある廃墟の一場面である。第三次及び第四時中東戦争で、クネイトラはイスラエル軍により完全に破壊された。写真の建物は倒壊を免れているものの、内部はミサイルや弾丸でこの有様。クネイトラの破壊直後、当時の国連事務総長はイスラエルを非難したが、シリア政府はその破壊された町全ての惨状を世界に見せるため保存している。ここを訪問するにはシリア政府の許可が必要だが、軍人が説明付きで町を案内してくれる。


                      Damascus, SYRIA
私がクネイトラを訪問し、昼過ぎにダマスカスに戻ると、シリア国民によるデモが市街地で行われていた。この年の2月にレバノンの元首相ラフィーク・ハリーリがベイルートで暗殺されたが、その暗殺にシリア政府が関与したと関係国から非難されたのに対し、アサド政権を支持するシリア国民の抗議デモであった。バックにある建物は、オスマントルコが1917年に建造したヒジャーズ駅という鉄道の駅舎で、現在、鉄道は廃止されたものの、駅舎は文化財として保存されている。


                           Tartus, SYRIA
シリア第二の港町であるタルトゥースは多くのシリア人に人気のあるリゾート地で、のんびりした町である。この海岸で撮影中、釣りをしていたシリア人に声をかけられ話しているうちに、「今晩、うちへ夕食を食べに来ないか。」と誘われ、実際にお邪魔してご馳走をいただいた。そのお宅で、ビールやその他のアルコール飲料を勧められ、イスラム教徒ではないのかと質問すると、はいそうだと・・・。宗派を聞かなかったが、要はイスラム教の中でも世俗的なアラウィ派。その方の奥さんまで飲酒していたので、驚いた。数ヶ月後、ちょうど私のシリア紀行を掲載した英文の雑誌が発行されたので、その家族に送ったところ、その家の息子さんから、今エジプトにいるけど元気かと突然の電話があった。現在の日本と違い、初対面でもすぐ友達になれる、それがアラブの良い面だと思う。最近の報道では、アラブのネガティブな話が多いが。


                           Arwad, SYRIA
タルトゥースの沖10kmに小さな島アルワドがあるが、島内には車がなく、非常にのんびりしていてリラックスできる。ここはシリア唯一の島で、漁業や漁船造りを島民の生業としている。狭い島で撮影していると、子供達から話しかけられたり、家の二階からお菓子を投げてくれたり、とてもフレンドリーな住民であった。


                          Marqab, SYRIA
タルトゥースから海岸線を北に車で1時間程走るとバニアスという町があり、そこから山岳地帯を登ると、頂上にマルカブ城という中世の城がある。写真では、老人夫婦が城に向かって登っているが、城から見える下界の町や地中海が美しい。バニアスからマルカブまでバスに乗ったが、城の数キロメートル手前が停留所だったので、かなりの上り坂を歩いていたところ、途中で小型のピックアップに拾われ、城まで送ってくれたので助かった。と、多くのシリア人はとても親切。バニアスからタルトゥースへの帰路、乗合いの小型バスに乗っていると、何処まで行くのかと男性に声をかけられ、全く知らない人なのに、私のバス代まで払ってくれた。私が貧乏そうに見えたのか、その人が異常に親切だったのかはいまだに?

2014年12月27日土曜日

2014年 営業終了

本日で今年の営業も無事終了することができました。ご来店いただいたみなさま、そして品をご購入いただいたみなさまに感謝申し上げます。どうも有難うございました。来年もどうぞよろしくお願い致します。
それではみなさま、風邪等引かれませんよう、どうか良い新年をお迎え下さい。



2014年12月25日木曜日

チュニジアのジュラバ


ジュラバとは、北アフリカでよく見掛けるフード付きコートのことです。モロッコやチュニジアの南部に多いので、これはマグレブに住むベルベルの民族衣装なのでしょう。写真のものは、90年程前にラクダの毛で織られたものです。何故はっきり90年といえるのかですが、実は、私の友人のお爺さんが若い頃から着用されていたものだそうです。羊と比べラクダの数は圧倒的に少ないですから、現在では羊毛製のものがほとんどで、ラクダの毛のものはやはり高価だとか。何か、ネズミ男を想像しますね。

2014年12月18日木曜日

漆豆皿


5客組の漆豆皿です。それぞれの皿に描かれた絵がモダーンですが、明治期頃の作でしょう。譲ってもらった業者さんによると、朽木のものではないかとのことでしたが、断定はできません。あまり頻繁には使われなかったようで、使用感はありますが、絵がしっかりと残り、欠けもなく、かなり良い状態です。お正月に使うにはもってこいの可愛い絵柄ではないでしょうか。

2014年12月11日木曜日

瀬戸焼酒器


寒くなれば、やはり日本酒でしょうか。今日は瀬戸で焼かれた酒器の紹介です。
糸目盆に乗せた徳利は、時々見掛ける廉価なものですが、御深井のように細かく入った貫入と、頻繁に使用された結果生まれた、口の部分のシミに魅かれ入手しました。底を見れば、なかなか味のつかない瀬戸の土が焦げ茶色になっていますから、江戸後期に作られたものでしょう。口縁に小ホツの銀直しがあります。
盃も、ポピュラーな麦藁手ですが、手にすっぽりと収まるフォルムです。麦藁手の時代判定は難しいのですが、まあ幕末〜明治頃の作でしょう。こちらは無疵完好です。

2014年12月4日木曜日

鉄のモノ

錆の安定した鉄味って、いいですね。その鉄味とかデザインとかで気に入るものを見つければ入手するようにしているのですが、今日はそんな2点を紹介致します。どちらも日本のものです。


斧の先です。ミニマルデザイン、鉄味、共にgoodです。


言わずと知れた鍵でございます。私の好みの古い家具に、横桟や縦桟のものがありますが、この鍵は縦桟デザインです。鍵のデザインとしては初見のものです。

2014年12月2日火曜日

菅原文太さんの死

高倉健さんに続き、菅原文太さんもお亡くなりになりました。原発反対、戦争反対、そのような菅原文太さんの思想や行動が、この世に残された我々の遺産となり、実現するようにと祈ります。合掌