『夕暮れに夜明けの歌を・文学を探しにロシアに行く』 著者: 奈倉有里
上記タイトルの本を読みました。ロシア語を学ぼうと思った高校生が、ロシア国立ゴーリキー文学大学に入学し、日本人として初めてその大学を卒業した後、日本の大学院を経て翻訳家となった著者のエッセイです。昨年の10月に発行された本ですから、現在行われているロシアのウクライナ侵攻以前に書かれていますが、かつてはソヴィエト連邦に属していた国々の、様々な問題も描かれています。ただ、それらの問題を知る以上に魅力的なことは、ストイックなまでにロシア文学を追求し、その中で、真摯に回らす思考、読み易い文章なので、お時間のある方には、是非読んでいただきたい1冊です。あとがきに代えてという項目の中で書かれている文章の一部を紹介しますと:ー
「文学の存在意義さえわからない政治家や批評家もどきが世界中で文学を軽視しはじめる時代というものがある。おかしいくらいに歴史のなかで繰り返されてきた現象なのに、さも新しいことをいうかのように文学不要論を披露する彼らは、本を丁寧に読まないがゆえにしらないのだ ー これまでいかに彼らとよく似た滑稽な人物が世界じゅうの文学作品に描かれてきたのかも、どれほど陳腐な主張をしているのかも。」
もうすぐ、参議院選挙がありますね。博打の胴元になって経済を回そうとする政治家たちが存在しますが、そのような者たちにこの国の将来を託すことができるのでしょうか。遊び人気質の私ですが、物事に対して真摯に対応する人物は常に応援しますし、自分自身もそのように実直な態度で生かされたいと思っています。