アイヌの品
昨日はアイヌの映画を観たこともあり、今日はアイヌの品を2点紹介致します。
胴に幾何学的な文様が彫られた、蛇紋岩の極小壺です。日本国内での蛇紋岩の分布は幅広く、北海道では南北に伸びた神居古潭帯に鉱脈が存在するようです。どのような目的でこの壺が作られたかは不明ですが、かなり小さな壺なので、祭祀用だったのではないかと想像しています。牙蓋を被せれば茶入に適したサイズですし、ホヤを被せれば香炉として使用できるでしょう。状態から見て、江戸〜明治頃の作と思われます。胴径6.5cm、高さ5.3cm
こちらは、乾燥した熊の手です。肉を取り除いて乾燥させたのでしょうか、縦に切った部分を縫い合わせています。アイヌの人たちにとって熊は神聖な存在だったようで、この手は護符として作られたのでしょう。サイズ: 11x7cm
下の画像にある桐箱に入っていました。
箱の本体と蓋ですが、箱の底には、古い紙片が残っていて、『昭和12年6月 アカン アイヌ部落 アイヌ娘ヨリ受ク』と書かれており、蓋には『エ与マンテ』と墨書きされています。譲り受けたのが昭和12年ということですが、その時は既に乾燥させた状態だったでしょうから、作られたのは大正時代以前だと考えています。
箱蓋の内側には、『エヨマンテー 蝦夷土人首飾』と書かれており、現在でもアイヌの人たちに対して侮蔑的な見方をしている人間が存在しますが、明治政府が和人と区別するためにアイヌ民族を『土人』という蔑称で呼びました。それ故に、この蓋に墨書きした本人に差別意識なんてなく、そういった見方がほとんどの日本人の中に共通していたのでしょう。現在でも差別が横行していますが、日本が島国であるせいか、村社会の中でヒエラルキーが生まれ、いまだにそれが解消されないとは、恥ずべき事柄です。国を動かす政治家の中にも差別的な発言を平気でする者が存在し、そういった者を政党が選び、有権者が投票しているわけですから、やはり多くの日本人にも問題があるのでしょう。勿論、全ての日本人がそうであるわけではないのですが。