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2013年12月4日水曜日

国家と情報 警視庁公安部「イスラム捜査」流出資料を読む   現代書館

刊行は2年程前になるのですが、本の紹介をします。上記したものが、そのタイトルと出版社です。
2010年10月28日、何者かが警視庁外事3課保有の「公安テロ」情報ファイルをインターネット上に流出させました。ファイル数114、字数にして約70万字、個人肖像写真は被害者関係で21人分に及ぶ膨大な情報で、内容は、日本居住及び訪問したイスラム教徒全体を、テロリスト予備軍として監視の対象におき、秘密裏に捜査を行っていたというものです。また、そこには米連邦捜査局(FBI)や他の海外情報機関からの捜査要請資料も混在していました。そのファイルが流出した同時期に、尖閣諸島沖での中国漁船衝突ビデオの流出事件が起きたため、世間の関心がそちらに傾いたようで、こちらに関してはほとんど理解されていないのではないでしょうか。
この本は、ファイルにもられた情報とその漏洩が何を意味するのか、複数の著者(弁護士・ジャーナリスト等)によって解明し、明らかにする意図で刊行されたとあります。特に、東京新聞の記者である田原牧氏(私感ですが、日本のジャーナリストの中で、最も中東問題を理解できている方だと思います)による文章では、我が国とイスラム諸国の関係やその歴史を明確に書かれていて、読み応えがあります。

この「公安テロ」情報ファイル流出による海外での問題点は、海外の捜査機関及び情報機関による日本政府や警察への信用が失墜したことと、長年培ってきたアラブやイスラム諸国との友好的関係にヒビが入ったことでしょう。このようなことも、現在大きな問題になっている、「特定秘密保護法案」成立に政府が躍起になっている理由の一つではないでしょうか。国際法を破ってまでユダヤ人だけの国家を作ろうとしているイスラエルに、世界の多くの国から非難が浴びせられていますが、このところ日本ではイスラエル企業の進出が目立っているようです。福島第一原発の事故後には、イスラエルのセキュリティ会社が日本国内の原発に関わっていることが発覚しました。秘密保護法が成立すれば、そのような事実を探ることや、それを暴露することは、確実に罪に問われることになるでしょう。日本も、イスラエルと同じように、世界から孤立する方向に進まなければ良いのですが・・・。

随分前に、国立民族学博物館の初代館長だった故梅棹忠夫氏が、特定の宗教を持たない主義だが、どうしても一つ選べといわれれば、私はイスラム教を選ぶだろうと述べられたことを思い出します。私も同感です。これまで多くの宗教に関する本を読み、他人に害を及ぼさない宗教であれば、その全てをリスペクトしますが、特定の宗教を持つつもりはありません。でも、これまで知った宗教の中で、イスラームの教えが最も真面目であると認識しています。私は、9.11の直後から10年間、アラブでドキュメンタリーの写真を撮っていましたので、イスラム教徒の友人が多くいます。神の下で正しく生かされようとする彼等の真摯な態度、そして友に対する優しさを十分に感じているのです。