企画展 『Favorites』
今日の品紹介は、古写経の残欠3点です。軸装は、各人の好みがありますので、取り敢えず、額装にしております。
3点共、京都の藝林荘が昭和34年に売り出したもので、同一コレクターの所蔵品でした。
これらの残欠は台紙に貼られており、台紙の裏には、仏教学者であり、浄土真宗本願寺派の僧侶でもいらっしゃった、禿氏祐祥 (とくし ゆうしょう・1879~1960) 氏の解説が書かれていますので、それを、それぞれの画像の下に、緑字で記します。
山邊初花 (花初の間違いだと思われる) 校の
大般若派羅密多経巻第三百九十五の一具経の残欠
記 山脊野中は天平八年七月に薬師教二十一巻の書生
中の人物 宝亀四年に至る迄 三十八年間の記録ある
写経生 一難宝郎の如き筆才ではないが欧風の
よい所を取入れて横書に直線的の鋭さがある古法
体である
此の経は守屋先生の所持せらるる一巻と此の残欠の
みであります
田中塊堂氏の古経綜鑑第百五十六頁山脊野中
書写を対照せられたり
上記の守屋先生とは、守屋孝蔵 (1876~1954) 氏のことで、弁護士であり、古写経をはじめ美術品の著名な蒐集家であった。
その一巻は、京都国立博物館に所蔵され、重要文化財となっている。
摩訶般若波羅蜜経の残欠
斐紙 (雁皮紙) とは、沈丁花科の植物である、雁皮から作られる和紙。斐紙・肥紙は古代の名称で、美しさと風格により、紙の王と評される。
この摩訶般若派羅密経 (大品般若経) は、西域の僧であった、鳩摩羅什 (くまらじゅう) の漢訳。
五行の残欠だが、濃い紺紙に付いた古色が美しく、ヴィジュアルとしても素晴らしい。